「我々にはホームで行われるこの試合で最後のホイッスルが鳴るときに、勝者として国旗を掲げる義務がある。」


 それが試合前々日の、ウガンダ代表の主力選手ティモシー・バタバイエのコメントである。彼の言葉からは勝利に対する並々ならぬ決意を感じることができた。このぶんだと結構白熱した良いゲームになるかもしれない・・・いや、してもらわないと困る。何故なら僕はこの試合を観戦するために、それなりの苦労を強いられたのだから。

僕がそのウガンダ代表の中心選手が発したコメントを地元英字紙『デイリー・モニター』のスポーツ欄で目にしたのは、僕がウガンダの首都カンパラに到着した翌々日、2005年10月5日のことだった。

僕はカンパラに到着してすぐに試合のチケットを購入しようと思ったのだが、ウガンダというアフリカ内陸部の国へ来たのはもちろん初めてのことだったから、僕はこの国ではどうやったら試合観戦のためのチケットを手に入れることができるのかということについて、何も知らなかった。あと付け加えるなら、試合の開始時間や試合会場についても何も知らなかった。ようするに試合の日程以外は全く何も知らなかったのである。

そしてそれらについての情報はどこに行けば手に入るのか考えた結果、僕は観光案内所へと足を運ぶことにした。それがごくまっとうなアイデアであるように思えたからだ。


「サッカーの試合ですって?」

 観光案内所で僕がチケットについて尋ねたとき、応対してくれた職員の女性はいかにも驚いたという表情で、そう僕に訊き返した。

「ええ、そうです。土曜日に行われるワールドカップ最終予選・最終節の試合のチケットを買いたいんです。」

「・・・で、その試合はあなたが観戦するのかしら?」

「もちろんです。僕が自分で見に行くんです。」

 その僕の返答に、女性は無言で頷いた。「やれやれ、今日はツイてないわね。」という露骨な表情で。



ウガンダは確かにエジプトやケニア、あるいは南アフリカ共和国といった国々と比べると、外国人旅行者にとって有名な国とは言えないかもしれないが、それでもある程度の観光資源は一応そろっている。だからこそ首都には観光案内所を設置してもいるのだが、そういった案内所の一般的な仕事は訪れる旅行者に対して、国立公園でのゲームドライブやマウンテンゴリラを観察するトレッキング、あるいはナイル川でのラフティングなどをアレンジすることである・・・というのは僕にもよくわかる。でもスポーツ観戦の情報提供というのも、できればその業務に加えてほしい。

もしこれがイギリスのロンドンだったら(あるいはイタリアのミラノだったら)チケットについて尋ねたとしても、案内所の職員から驚愕の眼差しで見られることは、おそらくないのではないだろうか?外国人観光客がサッカーの試合見たさに観光案内所を訪れることはしょっちゅうとは言わないまでも、少しぐらいあるんじゃないかと思う。

しかしカンパラで、「ウガンダとブルキナ・ファソとの間で行われる国際試合のチケットを購入する方法について尋ねにくる、スワヒリ語もまともに話せない日本人。」というのは、そんなに多くはないのかもしれない。あるいはそういうことをしたのは僕が初めてという可能性も十分に考えられる。

職員の女性は面倒くさがりながらも、一応最低限のことはしてくれた。電話帳でウガンダサッカー協会の電話番号を調べ、メモに書いて僕に渡してくれた。この観光案内所にはサッカーに関する情報は全く無いから、あなたが自分でそこに電話して尋ねてみてくれと、僕に言った。僕は礼を言って案内所を出た。

それから僕は路上の電話屋(そういう商売が存在する)を見つけ、ウガンダサッカー協会をコールしてみる。外国のサッカー協会に電話をかけるというのは、僕の人生で今回が最初のことである。そしてできれば最後になってほしいと思いながら、相手が出るのを待った。幸いにもサッカー協会の職員とは英語で会話することができた。そして試合は10月8日の土曜日で、午後6時にキックオフ。場所は「ナンボーレ・スタジアム」で、チケットは当日スタジアムで購入できることがわかった。

そして待ちに待った10月8日の午後4時頃に、僕はカンパラの宿で偶然に再会したM也クンと一緒に乗り合いタクシーで試合会場に到着した。

『マンデラ・ナショナル・スタジアム』 ― それが本日の試合が開催される会場の正式名称ということになっているのだが、人々からこのスタジアムがその正式名称で呼ばれることはほとんど無いと言ってよい。地元の人間はこのスタジアムが首都カンパラ郊外のナンボーレ地区にあることから、「ナンボーレ・スタジアム」と呼んでいる。

僕等は窓口でチケットを買い、そのスタジアムへと入る。そしてそこで僕等はウガンダ代表チームを取り巻く問題を垣間見ることになったのである。



ウガンダ代表チームは明らかに問題を抱えていた。まず第一にウガンダサッカー協会の慢性的な財政不足。実はウガンダにはプロのサッカー選手が3人いるのだが(ちなみに日本のJリーグは約1500人)、彼等はウガンダではなく海外のリーグでプレー(といってもヨーロッパではなく、例えば「南アフリカ共和国リーグ」のような、あくまで近隣諸国のリーグである。)している。本来であればそのプロ選手達は実力的にみて最優先で代表チームに召集されるべきなのだが、彼等が母国に戻る際の飛行機代を協会が負担できずに、ベストメンバーで試合に臨むことができなかった。

問題は他にもある。例えば代表チームの監督は「警官FC」所属のエース、マーティン・ムワンガ選手を「真剣さに欠ける」として代表メンバーから放り出していた。理由は彼が試合前のキャンプから「逃亡した」からだそうだ。ちょっと信じがたいハナシである。

更に言わせてもらうと、「警官FC」というチームもよくわからない。ウガンダにはプロリーグが存在しないから、同じ職場の人間が集まってチームを組織しているということなのだろうか?ひょっとしたら他にも「AC消防団」とか、あるいは「図書館司書SC」なんていうチームがあるのかもしれない。

ちなみにこれらの情報は全て新聞に掲載されていた内容である。しかしながら僕はこれらの記事から真実味というものをあまり感じとることができなかった。新聞がウソを書くとは思えないから全部事実なんだろうけど、どれもこれも日本人の感覚からすると冗談のようなハナシばかりで、記事を読んでいてもいまひとつ素直に首肯することができなかったのである。

ところがスタジアムへと足を踏み入れ試合開始を待つ間に、僕はそんなウガンダ代表を取り巻く問題に極めて強く、「なるほど」と、うなずくことになったのである。



僕がスタジアムへ入ったのは、試合開始のおよそ2時間前である。そのときスタジアムの観客席はガラガラの状態であった。そんなスタジアムを見て僕は自分でも「2時間前っていうのはさすがにちょっと早すぎたかな」と、思わないでもなかった。僕は当日販売されるチケットが売り切れるのを恐れてそんな時間にやってきたのだが、この観客席の状況を見ると、2時間も早く来る必要はなかったのかもしれない。僕はM也クンとハナシをしながらヒマを潰し、次第にスタンドが埋まっていくのを待つことにした。

それから僕が、「これはちょっとおかしいな」と、考えるようになったのは、たぶん試合開始の30分前ぐらいからだったと思う。何がおかしいのかというと、試合開始時間が刻々と迫ってくるというのに、スタンドの席が埋まる気配がいっこうにないのである。

そしてウォーミングアップを終えた選手達がグラウンドに入場してきたときに、僕がざっとスタンドを見回したところ、観客数は400人くらいだった。

ちなみにこのスタジアムの最大収容人数は4万人。ウガンダにしてはかなり立派なスタジアムだと思うのだが、そんなスタジアムの観客は何度数えなおしてもやっぱり400人ぐらいしかいない。4000人ではなくて400人である。こんなことちょっと普通では考えられない。なぜならサッカーは世界で最も人気があるスポーツだからだ。

そしてその事実はもちろんアフリカでも変わらない。路上では子供達が野球をやっているのは見かけなくても、サッカーをやっている光景はよく見かける。テレビのチャンネルを回すとバレーボールの試合は放送されてなくても、サッカーの試合はよく中継されている。そしてそういう状況はウガンダでも同じである。ウガンダでもサッカーが一番人気のあるスポーツであることは間違いないと思う。

「ではなぜ人々は試合を観に来ないのだろう?」

もちろん僕はウガンダ人ではないので、あくまで想像の範囲内でのことだが、考えてみると思いつくことは幾つかある。まず第一に代表チームの実力である。これから僕が観ようとしている試合は2006年に開催されるワールドカップ・ドイツ大会の出場権を賭けた最終予選である。しかしながら今日の結果によらず、ウガンダ代表がワールドカップに出場できる可能性は、実を言うと既に0パーセントなのである。悲しいことに。

今夜行われる試合はその最終予選の10試合目で、最終節である。ワールドカップに出場できるのは6カ国で構成されるグループの1位のみ。そして現在のウガンダ代表の順位は6チーム中の6位、ようするに最下位だ。まあここまで9試合戦ってきて2勝6敗1引き分けという成績だから、最下位という順位も仕方が無い。ようするに何が言いたいのかというと、

ウガンダ代表は『とてつもなく弱いチーム』なのである。

こういう現状だと、「サッカーは大好きだけど、代表チームには愛想を尽かしている。」という雰囲気が生まれてきても、決して不思議ではない。そうなるともう予選敗退が決定している代表チームを応援するためにわざわざスタジアムまで駆けつけたいと考える人も、あるいはそんなに多くはないのかもしれない。

そして第二に経済的な問題である。本当はみんな試合を観戦したいんだけど、ひょっとしたらチケットを買うお金がないということも考えられる。ブラックアフリカの国々には今日の食事にも困るという人が沢山いる。そういう人たちが少ない大切なお金をサッカー観戦にまわすとは考えにくい。

以上が僕の推論であるが、それが的を得ているのかどうかはわからない。しかし何にせよスタジアムが空席だらけというのは明らかに大きな問題だと思うし

「これじゃあ入場料収入もたいした額にはならないよな」

 と、思わずウガンダサッカー協会に同情してしまう。そして今となってはもちろん、あの新聞に掲載された記事に対して素直に納得することもできる・・・というようなことを考えているうちに両国の国歌斉唱が終わり、試合が始まることになった。クレインズとスタリオンズの戦いが。



クレインズ ― それがウガンダ代表のニックネームだった。クレインとは『鶴』という意味なのだが、しかし僕にはなぜそのような愛称を代表チームにつけたのか、イマイチ理解できない。だって鶴なんていかにも弱そうな(鶴には悪いとは思うが)イメージである。鳥の種類をニックネームにするのは悪いアイデアだとは思わないけど、どうせならもっと強そうな印象がある鳥を選んでもらいたい・・・と思っていたら、そういえばあの世界最強のブラジルも『カナリア軍団』と呼ばれる事があるのを、ふと思い出した。よく考えてみたらカナリアもそんなに強そうな鳥じゃない。ひょっとしたらウガンダ代表も鶴のままでもいいのかもしれない。まあウガンダ代表のことだし、ウガンダ人が納得してればそれでいいのだろう。

そしてそんな『鶴軍団』と戦うのがスタリオンズという愛称を持つ、ブルキナ・ファソである。スタリオンとはもちろん『種馬』という意味だ。以前シルベスター・スタローンが「イタリアの種馬」と呼ばれるボクサーの役を演じる映画があったけれど、それを考えるとブルキナ・ファソは「西アフリカの種馬」ということになるのだろうか?いずれにしても現実のアフリカの草原で鶴と種馬が戦うという光景はちょっと想像しにくいけれど、まあこれはサッカーの試合だから余計な詮索はしないでおこう。

それで肝心の試合の内容なのだが、これがもう両チームとも本当にガッカリするくらい下手である。思わず日本の高校生のほうがずっと強いんじゃないかと疑ってしまうくらいに下手なのだ。

両チームとも必死にやっているのは認めるが、しかし残念ながら戦術というものが全然ない。パスを回しながらチャンスをうかがうとか、ポジション・チェンジを繰り返して相手マークを外すとか、ディフェンダーが攻撃参加するとか、そういった戦術らしい戦術が全く無い。特にウガンダの攻撃はひどすぎる。

ウガンダの攻撃を見ていると、相手からボールを奪うとすぐにフォワードがゴール前に突進し、そこへ向かって後方からロングボールを放り込んでヘディングで競るの一辺倒な攻めだ。試合終盤ならまだしも最初からこんな事するなんて、現代サッカーではあまりない。まるで中盤を完全に省略した一昔前のイングランド・サッカーを見ているような気分である。いくらイギリスの植民地だったからといっても、こんなことまで真似しなくてもいいだろうに。

試合が始まって少しすると、M也クンが僕に尋ねてきた。

「KOGさん、この試合どっちが勝つと思います?」

「M也クンはどう思う?」
 僕は自分の返答を先送りして、M也クンに訊き返した。

「ブルキナ・ファソですね。どっちもヒドイと言えばヒドイけど、それでもブルキナ・ファソのほうがまだマシなサッカーをしていると思います。そう思いません?」
 M也クンは自分の意見を述べた。

「僕も確かにブルキナ・ファソのほうが強いとは思うけど、でもここはウガンダのホームだよ。多少の実力差なんて試合の結果には反映しないかもしれないよ。」
 僕はごく常識的な反論をした。

「じゃあ賭けますか?負けたほうがビールをおごるってのはどうです?」
 M也クンはニヤニヤしながら、僕にふっかけてきた。

「いいよ。」
 僕は答えた。

そういうわけで僕はウガンダを応援することになってしまった。かといって僕がウガンダに対して何か特別な愛着を感じているのかというと、そういうことは全然ない。身内にウガンダ人がいるわけでもないし、過去にウガンダ人女性とお付き合いしたというような経験もない。あくまで行きがかり上である。だけどサッカーというのはただ観るよりも、ひいきのチームを応援しながら観るほうがずっと面白いので、まあこれもいいだろう。

先制点はブルキナ・ファソだった。M也クンの言うとうりブルキナ・ファソもひどいサッカーをしていたが、ウガンダに比べればまだマシだった。試合展開から言っても、ブルキナ・ファソが得点するのは時間の問題だったと思う。なにしろウガンダのディフェンスはザルも同然だったから。僕は賭けをしたことを後悔し始めていた。

それから先取点を許したウガンダも何とか反撃に出ようとするが、やり方は例によってロングボールを放り込むだけである。そして簡単にはね返される。当たり前のことだが、こういう攻撃はそう簡単に得点につながらないのだ・・・なんて思っていたら、予想外の展開が起きた。ウガンダの選手がペナルティ・エリア内で倒されてPKを獲得したのである。この判定がホーム・アドバンテージによるものなのかどうかは微妙なところではあるが、とにかくこれが無難に決まり、同点に追いついたところで試合の前半が終了になった。



試合の前半を僕なりに総括すると、ウガンダはブルキナ・ファソに対して実力で劣っているのは明らかであったが、それでもよく耐えている ― という感じである。新聞に掲載されていたティモシー・バタバイエのコメントにもあったように、ウガンダの選手達からは勝利に対する意気込みのようなものが伝わってくる。もう一度言うがウガンダはこの試合に勝ったとしてもワールドカップには出場できない。しかし彼等は決して手を抜いたプレーを見せなかったし、あきらめムードのような雰囲気も感じられなかった。あるいは彼等は、残された「最後の目標」のために必死になっているのかもしれない。

「単独最下位を逃れる」という、ささやかな目標のために。

現在ウガンダとグループ5位のカーボ・ヴェルデ(御存知ないかもしれないが、アフリカにはそういう名前の国がある)との勝ち点の差は3ポイント。今夜の試合にウガンダが勝ち、カーボ・ヴェルデが同時刻で行われているガーナとの最終戦に敗れれば、勝ち点で並ぶことになる。そしてガーナはグループ1位の強豪だから、カーボ・ヴェルデの敗戦は十分に考えられることであった。


後半が始まると同時に、ブルキナファソの攻撃陣がどんどんウガンダの守備を崩していく(まあ元々崩れているような守備だが)。ブルキナ・ファソはシュートを連発し、ウガンダはほとんどサンドバックの状態である。

しかしそれにもかかわらずブルキナ・ファソのシュートの精度が低いのと、ウガンダのゴールキーパーの好守連発で(個人的にはこのゴールキーパーが本日のMVPだと思う)なかなか得点に至らずに、1対1の均衡状態が続く。しかしそれも時間の問題だろう、いつまでも防ぎきれるものじゃない・・・と、僕が思っていたら、とんでもない事が起こったのである。あるいはこれはサッカーの女神がウガンダにもたらした幸運だったのかもしれないが、とにかくそれは起こった。いったい何が起こったのかというと、


突然スタジアムが『停電』したのである。


もちろん僕はビックリした。といっても停電にビックリしたわけではない。停電なんてアフリカでは日常茶飯事なので、いちいちそんなことでは驚かない。僕がビックリしたのは、「ワールドカップ予選のような重要な大会で停電が起こった」ことに対してである。まあこんなことを言っては失礼だが、アフリカらしいと言えば確かにアフリカらしいことには違いないが。

停電はおよそ20分間にわたって続いた。そして結果的にはこの停電はウガンダに味方したと言っていいだろう。試合再開後にブルキナ・ファソの攻撃が全く鳴りを潜めてしまったのである。ようするに試合の流れが変わってしまったのだ。チャンスを逃し続けていると流れを失ってしまうというのはサッカーの常だけど、ブルキナ・ファソの選手達もまさかこんなかたちで主導権を奪われるとは思っていなかっただろう。しかしとにかく流れは変わった。

ウガンダのやっていることは前半と全く同じ、単純にロングボールをゴール前に放り込むだけなのだが、ブルキナ・ファソの守備陣は前半と違ってこの攻撃に対応できなくなってきていた。猛攻撃の疲れが出てきたのかどうかわからないが、ボールの処理を誤ってピンチを招いたり、相手選手のマークを忘れたりして、もうドタバタの連続である。

そしてウガンダはそんな相手のミスに上手くつけ込んだ。ゴール前でこぼれたボールをよく拾い、シュートに持っていく。そんなことを何度も繰り返しているうちに、ついにウガンダのシュートが決まってしまった。これで逆転である。少ないウガンダ・サポーターもみんな大喜びしている。このままいけば予選での3勝目が転がり込んでくる・・・と思ったら、そこはやっぱりウガンダである。リードしたのもつかの間自陣で反則を犯し、相手にフリーキックのチャンスを与えてしまう。そしてゴール前に放り込まれたボールを見事にヘディングで決められてしまい、これで再び試合は振り出しに戻る。

その後は両チームとも次々に選手を交代して勝ち越し点を奪いにいく。新たに投入された選手達は疲労の為に動きが鈍った選手達を尻目に猛然とボールを追っている。そんな選手達のヘディングの高さや、相手を振り切る際のスピードを見ていると、つくづくアフリカ人選手の恵まれた身体能力はすごいなあと思う。僕は個人的に技術よりもスピードとパワーが重視される最近のサッカーがあまり好きではないのだけれど、こういうのを見ていると確かにその有効性は認めないわけにはいかない。

ただその身体能力は、少なくともこの後の経過においては決定的なチャンスを作り出すことは無かった。残念ながら彼等の身体能力を活かすための戦術というものが欠けていたのである。そして結局どちらも3点目を奪うことはかなわないまま試合終了のフエを聞くことになった。2対2の引き分けである。



こうしてクレインズの戦いは終わった。ワールドカップ本大会の出場権を獲得することができなかったのはもちろん、最終順位がグループ最下位という結果での予選終了は、ある程度予想されていたこととはいえ、応援した立場から言うならやっぱり残念だった。

しかしそれでも、(試合内容もお世辞にも素晴らしいとは言えないが)僕はこのゲームを充分楽しめたと思う。海外で国際試合を観るのは初めてのことだったし、何よりもアフリカのサッカーをナマで体験するというのは日本人にとって得がたい経験のはずである。

僕がアフリカでサッカーの試合を観戦する機会は、あるいはもう二度と無いかもしれない。しかし今夜を境に僕は今まで以上に『アフリカン・フットボール』に興味を持つことになるだろうし、ウガンダ代表に愛着を感じるようにもなるだろう。いつか満員のクレインズ・サポーターで埋まる「ナンボーレ・スタジアム」で、ウガンダがワールドカップ出場を決める日が来ることを祈りながら、僕はスタジアムを後にした。


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